リテンションとは?既存顧客との絆を深めるマーケティング戦略

人口減少時代を迎え、新規顧客の獲得がますます困難になっている今日のビジネス環境。そんな中で注目を集めているのが、既存顧客との関係性を強化する「リテンションマーケティング」です。

新規顧客の獲得コストは既存顧客維持の5倍かかるとされる中、いかに顧客との絆を深め、長期的な関係を築いていくかが企業の持続的な成長の鍵となっています。

本記事では、リテンションマーケティングの基礎から実践的な手法、最新の成功事例まで、体系的に解説していきます。

目次

リテンションマーケティングの重要性

市場環境が厳しさを増す中、既存顧客との関係性強化は企業の成長戦略において重要な位置づけとなっています。

リテンションマーケティングとは

リテンション(retention)とは、「保持」「維持」を意味する言葉です。ビジネスの文脈では、既存顧客との関係を維持・強化していくためのマーケティング活動全般を指します。

具体的には、メールマガジンやSNSを通じた情報発信、会員向け特典の提供、アフターサービスの充実など、顧客との接点を継続的に持ち、商品やサービスの利用を促進する施策が含まれます。

なぜ今リテンションマーケティングが重要なのか

リテンションマーケティングが注目される背景には、以下のような要因があります。

人口減少による市場の縮小

日本の人口は2008年をピークに減少傾向にあり、新規顧客の獲得はますます困難になっています。

デジタル化による競争激化

情報接触の利便性が上がり、顧客の選択肢が広がったことで競争が激化しています。顧客の獲得コストは上昇し続けており、既存顧客の維持がより重要になっています。

顧客の期待値の高まり

商品やサービスの品質だけでなく、カスタマーエクスペリエンス全体での満足度が求められる時代となっています。

リテンションマーケティングがもたらす3つのメリット

リテンションマーケティングを実践することで、企業には以下のようなメリットがもたらされます。

LTV(顧客生涯価値)の向上

継続的な取引により、一顧客あたりの売上・利益が増加します。また、クロスセルやアップセルの機会も生まれやすくなります。

コストパフォーマンスの向上

新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍のコストがかかるとされています。リテンション強化により、マーケティング効率が大幅に改善されます。

安定的な収益基盤の構築

リピーターの増加により、市場環境の変化に左右されにくい、安定的な収益構造を確立できます。

BtoBとBtoCにおけるリテンションの違い

BtoBとBtoCでは、リテンションマーケティングのアプローチに違いがあります。

BtoBの場合

取引規模が大きく顧客数が限られているため、一社一社との関係構築が重要です。商談から契約、運用サポートまで、長期的な伴走型の関係性が求められます。

BtoCの場合

多数の顧客を対象とするため、デジタルツールを活用した効率的なコミュニケーションが中心となります。ポイントプログラムやメンバーシップ制度など、スケーラブルな施策が重要です。

リテンションマーケティングの実践

リテンションマーケティングを成功させるためには、デジタルとリアルの両面からの包括的なアプローチが必要です。ここでは、具体的な実践手法と、それぞれの特徴やポイントについて解説していきます。

デジタルを活用したアプローチ手法

デジタル技術の進化により、顧客とのコミュニケーション方法は大きく変化しています。主な手法として以下が挙げられます。

まず、メールマーケティングはもっとも基本的かつ効果的な手法です。顧客の購買履歴や行動データに基づいて、パーソナライズされたコンテンツを届けることができます。定期的なメールマガジンだけでなく、購入後のフォローメールや、一定期間利用のない顧客への再訪促進メールなど、状況に応じた最適なコミュニケーションが可能です。

SNSマーケティングでは、X(旧Twitter)やInstagramを通じて、商品情報や企業の取り組みをタイムリーに発信できます。特に、顧客との双方向のコミュニケーションが可能な点が大きな特徴です。

オフラインでの関係構築施策

デジタルだけでなく、実際の対面での関係構築も重要です。ワークショップやセミナーの開催は、顧客との直接的な対話の機会を生み出します。

特に商品やサービスの使い方講座や、業界動向のセミナーなどは、顧客に価値を提供しながら関係性を深められる効果的な手法です。また、顧客同士のコミュニティ形成にもつながり、ブランドロイヤリティの向上に寄与します。

カスタマーサクセス・サポートの重要性

カスタマーサポートが問い合わせへの対応という受動的な役割なのに対し、カスタマーサクセスは顧客の成功を能動的にサポートする取り組みです。

導入支援やプロダクトの活用提案、定期的な利用状況の確認など、顧客が製品やサービスから最大限の価値を得られるよう支援します。これにより、継続的な利用と満足度の向上を実現できます。

顧客セグメント別アプローチ戦略

効果的なリテンションマーケティングには、顧客の属性や行動パターンに応じたセグメント化が不可欠です。

優良顧客には特別な特典や先行案内を提供し、さらなるロイヤリティ向上を図ります。一方、利用頻度が低下している顧客には、再活性化のためのキャンペーンや、製品活用のサポートを強化するなど、セグメントごとに最適なアプローチを設計することが重要です。

リピート購入を促進する具体的な施策

実際のリピート促進には、以下のような具体的な施策が効果的です。

まず、ポイントプログラムやメンバーシップ制度は、継続的な利用を促す基本的な仕組みです。利用金額に応じたステージ制を導入することで、顧客のステータス意識を刺激し、より多くの利用を促すことができます。

また、定期購入プログラムの提供や、クロスセル・アップセルの提案も重要です。ただし、これらは単なる販売促進ではなく、顧客にとっての価値提供を常に意識して設計する必要があります。

データドリブンなリテンションマーケティング

リテンションマーケティングの効果を最大化するには、データに基づいた戦略立案と実行が不可欠です。この章では、顧客データの収集・分析から効果測定まで、データドリブンなアプローチの具体的な方法を解説します。

顧客データの収集と分析

効果的なリテンションマーケティングの第一歩は、質の高い顧客データの収集です。収集すべき主要なデータには、基本的な顧客属性情報、購買履歴、サービス利用状況、問い合わせ履歴などが含まれます。

これらのデータは、購入時やアンケート、会員登録などさまざまなタッチポイントを通じて収集できます。ただし、個人情報保護の観点から、データ収集の目的と利用範囲を明確にし、顧客の同意を得ることが重要です。

収集したデータは、顧客行動の傾向分析や将来予測に活用します。例えば、過去の購買パターンから次回の購入可能性を予測したり、顧客の離反リスクを事前に察知したりすることが可能になります。

効果測定と改善の重要性

データドリブンなマーケティングでは、PDCAサイクルを回すことが重要です。施策の効果を定量的に測定し、その結果を次のアクションに反映させていきます。

効果測定の指標としては、リピート率、顧客満足度、LTV(顧客生涯価値)などが代表的です。これらの指標を定期的にモニタリングし、目標値との差異を分析することで、改善点を特定できます。

また、A/Bテストなどを通じて、どのような施策が効果的かを科学的に検証することも重要です。メールの文面やクーポンの内容など、細かな要素の違いが結果に大きな影響を与えることがあります。

CRMツールの活用

データの収集・分析・活用を効率的に行うために、CRM(顧客関係管理)ツールの導入が有効です。CRMツールを活用することで、顧客データの一元管理や、セグメント別のコミュニケーション自動化が可能になります。

特に、メール配信の最適化や、顧客の行動に応じたトリガーメールの設定など、きめ細かなマーケティング施策を実現できます。ただし、ツールの選定には自社の規模や目的に応じた適切な判断が必要です。

RFM分析

RFM分析は、顧客の価値を定量的に評価する手法です。Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標から、顧客をセグメント化します。

例えば、R(直近の購入)が3カ月以内、F(頻度)が月1回以上、M(金額)が平均購入単価以上の顧客は「優良顧客」として分類できます。このような分析により、セグメント別の最適なアプローチ方法を設計することが可能になります。

リテンション率

リテンション率は、顧客維持の状況を示す重要な指標です。

基本的な計算式は以下のとおりです。

リテンション率 =(期間終了時の顧客数 - 期間中の新規顧客数)÷ 期間開始時の顧客数 × 100

この指標を製品カテゴリーや顧客セグメント別に細かく分析することで、改善が必要な領域を特定できます。また、業界平均値との比較により、自社の強みや課題も明確になります。

業界別リテンションマーケティング成功事例

リテンションマーケティングの実践方法は業界によって大きく異なります。ここでは、各業界を代表する企業の具体的な取り組みを紹介し、その成功要因を分析します。

ECサイト(ZOZO TOWN)

アパレルEC最大手のZOZO TOWNは、独自の顧客維持戦略で高いリピート率を実現しています。その中核となっているのが、「ツケ払い」サービスです。

商品の注文から2カ月後まで支払いを延長できるこのサービスにより、顧客の購買障壁を大きく下げることに成功しました。特に、給与日前の購入をためらっていた顧客層の利用を促進し、購入頻度の向上につながっています。

また、会員限定クーポンの戦略的な配布や、アプリからのプッシュ通知による情報提供も、顧客との継続的な関係構築に貢献しています。これらの施策により、カート放置による機会損失を最小限に抑え、購入確定率の向上を実現しています。

サービス業(星野リゾート)

星野リゾートは、20%を超えるリピート率を達成している高級リゾート施設です。この業界平均を大きく上回る数字の背景には、緻密な顧客データの活用があります。

同社は、宿泊客へのアンケートを通じて収集した情報を徹底的にデータ化し、顧客のニーズや好みを把握。次回の来訪時には、過去の利用データに基づいてパーソナライズされたサービスを提供しています。

例えば、前回の滞在で和食を好んだ顧客には和食のおすすめプランを案内したり、温泉を重視する顧客には新しい温泉施設の情報を優先的に提供したりと、一人ひとりに最適化されたコミュニケーションを実現しています。

通信業界(NTTドコモ)

NTTドコモは、8,000万人を超える顧客基盤に対して、高度にパーソナライズされたマーケティングを展開しています。同社は、従来の通信料収入中心のビジネスモデルから、顧客との関係性を強化し、LTVを最大化する戦略への転換を図りました。

具体的には、MAツールを活用し、100本以上のシナリオに基づいたコミュニケーションを実施。これにより、コンバージョン率を12.5倍まで向上させることに成功しています。

特に、顧客の利用状況や契約内容に応じて最適なタイミングで情報を提供するパーソナライズキャンペーンが、高い効果を上げています。

観光業(JTB)

JTBは、顧客情報と観光コンテンツを統合的に活用することで、個々の顧客に寄り添ったサービス提供を実現しています。旅行商品は、日用品より購入スパンが長く、かつ情緒的な要因が購買決定に大きく影響する特徴があります。

この課題に対し、同社はCRMツールを活用し、営業情報の集約や情報発信の最適化を図っています。

これらの取り組みにより、顧客一人ひとりの旅行スタイルや好みに合わせた、きめ細かな提案が可能になっています。

これからのリテンションマーケティング

リテンションマーケティングの重要性は、テクノロジーの進化とともにますます高まっています。デジタル化の進展により、顧客との接点は多様化し、より緻密なコミュニケーションが可能になりました。

AIや機械学習の発展は、顧客行動の予測精度を飛躍的に向上させています。例えば、購買履歴や閲覧データを分析することで、顧客の離反リスクを事前に察知し、適切なタイミングでアプローチすることが可能になっています。

パーソナライゼーションも、今後さらに進化すると予想されます。単なる名前の差し替えだけでなく、顧客一人ひとりの興味・関心や行動パターンに基づいた、より深い文脈理解に基づくコミュニケーションが実現されるでしょう。

しかし、テクノロジーの活用は手段であって目的ではありません。重要なのは、顧客にとっての本質的な価値を理解し、それを継続的に提供し続けることです。データとテクノロジーを活用しながらも、人間的な温かみのある関係構築を心がけることが、これからのリテンションマーケティングの成功の鍵となるでしょう。

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