BtoBマーケティングにおいて、MQL(Marketing Qualified Lead)は売上拡大の重要な鍵を握る概念です。MQLとは「マーケティング活動によって創出された質の高い見込み客」を意味し、自社製品・サービスに関心を示し、将来的な商談につながる可能性が高いリードを指します。
多くの企業が新規顧客獲得に苦戦する中、MQLを効果的に創出・育成し、営業部門へと引き継ぐプロセスの最適化は、ビジネス成長の大きな推進力となります。しかし、MQLの定義や活用方法があいまいだったり、マーケティング部門と営業部門の連携がうまく取れなかったりすることで、その潜在的な価値を十分に引き出せていない企業も少なくありません。
本記事では、MQLの基本概念からSQLとの違い、効果的な創出・管理方法、そして組織間連携の課題解決まで、MQLに関する包括的な知識と実践的なアプローチを解説します。
MQLの基本概念
MQL(Marketing Qualified Lead)とは、マーケティング活動によって獲得した見込み客の中から、一定の基準に基づいて「質が高い」と判断されたリードのことです。展示会やセミナー、Webサイトでの資料ダウンロードなどを通じて自社を知り、関心を持った顧客の中から、今後の営業活動につながる可能性が高いと評価された見込み客を指します。
近年のデジタル化によって顧客の購買行動が変化し、自ら情報収集を行う顧客が増加する中、MQLの概念はマーケティング活動と営業活動をつなぐ重要な架け橋となっています。MQLを明確に定義し管理することは、限られたリソースを効率的に活用し、売上の最大化を実現するための基盤となるのです。
MQLの定義とは
MQLとは「Marketing Qualified Lead」の略語で、直訳すると「マーケティングで基準を満たしたリード」という意味です。マーケティング活動を通じて自社と接点を持った見込み客の中から、マーケティング部門が「営業活動の価値がある」と判断したリードを指します。
具体的には、展示会での名刺交換、ホワイトペーパーのダウンロード、セミナー参加、資料請求など、さまざまな形で自社に対する興味・関心を示した顧客が対象となります。ただし、すべての接点がMQLとなるわけではなく、企業が独自に定めた基準を満たしたリードのみがMQLとして認定されます。
なぜMQLが重要なのか
BtoBマーケティングにおいて、MQLの概念が重要視される理由は複数あります。
まず、MQLはマーケティング活動と営業活動の橋渡し役として機能するからです。マーケティングで獲得したすべてのリードを直接営業部門に渡すのではなく、あらかじめMQLという形で質の高いリードを選別することで、営業部門は効率的に活動を行うことができます。
また、デジタル化が進む現代のビジネス環境において、顧客は購買プロセスの大部分を自ら情報収集で進めるようになっています。ある調査によれば、BtoB購買者の約70%が販売担当者との商談や問い合わせ以外、例えば広告やオウンドメディアなどのオンラインで購入を決定したとされています。こうした変化の中で、顧客の購買段階を適切に見極め、タイミングよく営業活動につなげるMQLの役割はますます重要になっています。
MQLとSQLの違い
MQLとSQL(Sales Qualified Lead)は、どちらも見込み客を指す言葉ですが、その性質と段階には明確な違いがあります。MQLがマーケティング部門によって「有望」と判断されたリードであるのに対し、SQLは営業部門が「商談化・受注可能性が高い」と判断したリードです。
両者の最大の違いは、顧客の購買プロセスにおける位置づけにあります。MQLは製品・サービスに関心を持ち情報収集を始めた段階、SQLはより具体的な導入検討や比較評価を行う段階にあります。
SQLの定義
SQL(Sales Qualified Lead)とは、「営業で基準を満たしたリード」の略で、営業部門が「受注可能性が高い」と判断した見込み客を指します。MQLが「マーケティング部門の判断」によるものであるのに対して、SQLは「営業部門の判断」によるものという点が最大の違いです。
SQLは、ニーズが顕在化しており具体的な購入意欲を示している、予算や導入時期が明確になっている、意思決定者や決裁権限者との接点がある、といった特徴を持っています。
マーケティングファネルにおける位置づけ
マーケティングファネルは、顧客が製品やサービスを認知してから最終的に購入に至るまでのプロセスを表す概念です。一般的なマーケティングファネルは、「認知→興味・関心→検討→行動」という流れで表現されます。
このファネルにおいて、MQLは主に「興味・関心」から「検討」の初期段階に位置し、SQLは「検討」の後期から「行動」の初期段階に位置します。マーケティングファネルの上部ではマーケティング部門が主導し、下部では営業部門が主導となります。
MQLからSQLへの転換プロセス
MQLからSQLへの転換は、マーケティング部門から営業部門へとリードが引き継がれる重要なプロセスです。一般的な転換プロセスは、MQLの評価、営業部門への引き継ぎ、初期コンタクト、追加情報収集、SQL判定、営業活動の開始という流れになります。
この転換プロセスをより効果的に行うためには、マーケティング部門と営業部門の緊密な連携が不可欠です。両部門で共通の評価基準や用語を定義し、情報共有の仕組みを整えることで、リードの取りこぼしや重複作業を防ぐことができます。
MQL創出の3ステップ

質の高いMQLを創出するには、「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」という3つの段階的なプロセスが不可欠です。まず見込み客を獲得し、次に継続的な情報提供で育成し、最後に質の高いリードを選別するという一連の流れです。
ステップ1:リードジェネレーション(見込み客の獲得)
リードジェネレーションは、MQL創出プロセスの最初のステップであり、自社の製品やサービスに興味を持つ可能性のある見込み客を獲得する活動です。効果的な施策としては、コンテンツマーケティング、イベント開催、デジタル広告、SEO対策、ソーシャルメディアなどがあります。
リードジェネレーションを成功させるポイントは、ターゲット設定の精度にあります。自社の製品・サービスがもっとも価値を提供できる顧客像(ペルソナ)を明確に定義し、そのペルソナに響くメッセージとチャネルを選択することが重要です。
ステップ2:リードナーチャリング(見込み客の育成)
リードナーチャリングは、獲得したリードに対して継続的に価値ある情報を提供し、信頼関係を構築しながら、購買意欲を高めていくプロセスです。メールマーケティング、リターゲティング広告、パーソナライズされたコンテンツ提供、定期的なフォローアップなどが効果的な手法です。
ある調査によれば、フォローアップされなかったリードの約80%が2年以内に競合他社から製品を購入しているとされ、ナーチャリングの重要性を示しています。顧客の購買プロセスに合わせたコミュニケーション設計が成功のポイントです。
ステップ3:リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)
リードクオリフィケーションは、ナーチャリングで育成されたリードの中から、本当に質の高いリード(MQL)を選別するプロセスです。スコアリング、購買意欲の評価、BANT評価(Budget、Authority、Need、Timeframe)、行動トリガー、手動評価などの手法があります。
マーケティング部門と営業部門が共同でMQLの定義や評価基準を策定し、定期的に見直すことが重要です。実際の成約実績との相関関係を分析することで、より精度の高いMQL抽出が可能になります。
MQL活用によるビジネスメリット
MQLを戦略的に活用することで、さまざまなビジネス上のメリットを享受できます。主なメリットとして、営業活動の効率化、リピーター獲得と顧客生涯価値の向上、有益なフィードバック獲得が挙げられます。
営業活動の効率化
MQL活用のもっとも直接的なメリットは、営業活動の効率化です。マーケティング部門がリードの質を事前に評価し、営業活動の価値があるリードだけを営業部門に引き継ぐことで、営業リソースを効果的に配分できます。
営業担当者の時間の有効活用、成約率の向上、営業サイクルの短縮、営業コストの削減、予測可能性の向上などの効率化が実現します。MQLを活用した営業アプローチは、飛び込み営業に比べて約5倍の成約率が得られるともいわれています。
リピーター獲得と顧客生涯価値の向上
MQLを適切に育成し、成約へと導くことは、長期的な顧客関係の構築につながります。信頼関係を構築し、顧客の課題やニーズを深く理解した上で提案を行うことで、購入後もリピーターとして継続的な取引が期待できます。
リピーター獲得による主なメリットは、顧客生涯価値(LTV)の向上、販売コストの削減、クロスセル・アップセルの機会創出、安定した収益基盤の構築などです。特にサブスクリプションモデルのビジネスでは、この「継続的な関係構築」が非常に重要です。
有益なフィードバック獲得
MQLは自社の製品やサービスに対して一定の関心と理解を持っているため、貴重なフィードバック源となります。このフィードバックは、製品開発やマーケティング戦略の改善に生かすことができます。
製品・サービスの改善、未充足ニーズの発見、競合他社との差別化ポイントの明確化、マーケティングメッセージの最適化などが主なメリットです。MQLとの対話の機会を意識的に設けることが、効果的なフィードバック収集のポイントです。
MQLとSQL連携の課題と解決策
MQLとSQLの効果的な連携は、多くの企業で課題となっています。主な課題と解決策について見ていきましょう。
営業部門によるMQL放置
MQLとSQL連携におけるありがちな課題が、営業部門によるMQL放置問題です。短期的な売上目標のプレッシャーや、MQLの質に対する不信感などが原因ですが、この問題は長期的な機会損失につながります。フォローされなかったリードの多くは、競合他社に流れてしまう可能性が高いためです。
解決策としては、営業部門のKPIにMQLフォロー率を組み込む、インサイドセールス部門を設立してMQLフォローを専門的に行う、MQLの質を高めるための基準見直しを行うなどが有効です。
部門間の情報共有と連携
マーケティング部門と営業部門の間で情報共有が不足していると、MQLの質が低下したり、適切なフォローアップができなかったりする問題が生じます。解決策としては、定期的な部門間ミーティングの実施、共通のシステムやプラットフォームの導入、リードハンドオフプロセスの明確化などが効果的です。
効果的なスコアリング基準
MQLとSQLの連携における重要な要素の一つが、効果的なスコアリング基準の設定です。両部門に納得される形で設計されていないと、MQLの質に対する不信感や放置問題につながります。
マーケティング部門と営業部門が共同でスコアリング基準を設計する、行動スコアと属性スコアを組み合わせる、実績データに基づいて調整する、定期的に見直しを行うなどのポイントが重要です。
MAツールを活用したMQL管理の最適化
マーケティングオートメーション(MA)ツールは、MQL管理を効率化・高度化する強力な武器です。見込み客の行動や属性に基づいたスコアリングや、パーソナライズされたナーチャリングプログラムの実行が可能になります。
効果的なスコアリングの設計
MAツールを活用した効果的なスコアリングシステムを設計するためには、行動ベースと属性ベースのスコアリングバランス、行動の「質」を考慮した配点、時間的減衰の考慮、負のスコアリングの導入、テスト・検証・改善のサイクルなどが重要です。
自動化されたナーチャリングプログラム
MAツールの強みの一つが、自動化されたナーチャリングプログラムの構築です。顧客の行動や興味に合わせて、適切なコンテンツを適切なタイミングで届けることで、効率的な見込み客育成が可能になります。
顧客の購買プロセスに合わせたコンテンツ設計、パーソナライズされたコミュニケーション、マルチチャネルアプローチ、エンゲージメントに基づく分岐シナリオなどが効果的なプログラム設計のポイントです。
データ分析に基づく継続的な改善
MAツールから得られるデータを活用して、MQL管理プロセスを継続的に改善することが重要です。KPIの設定と定期的なモニタリング、A/Bテストの実施、ファネル分析、セグメント分析、営業部門からのフィードバック反映などが効果的な改善のポイントです。
成功するMQL戦略のポイント
MQLを活用した効果的なマーケティング戦略の実現には、自社の状況に合った明確なMQLの定義と評価基準の確立、マーケティング部門と営業部門の連携できる組織体制の構築、一貫した顧客中心のアプローチ、テクノロジーを活用したデータドリブンな運用が重要です。
これらのポイントを押さえた総合的なMQL戦略を実践することで、マーケティング活動の効率化と営業成果の最大化を実現し、持続的な事業成長につなげることができるでしょう。
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