Marketing Glossary DX・マーケティング用語集
Robotic Process Automation(RPA)
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは?
Robotic Process Automation(RPA)とは、主にパソコンで行う定型的な事務作業を、ソフトウェアのロボットが代行・自動化する技術です。「仮想知的労働者(Digital Labor)」とも呼ばれ、データの入力や転記、情報収集などを人の代わりに行い、業務効率化や生産性向上を実現します。
RPAでできること
RPAは、人がPC画面上で行う「ルールが決まっている単純作業」を得意とします。複数のアプリケーションをまたいで作業できるのが大きな特徴です。
- データ入力・転記
- Excelの顧客リストを販売管理システムへ自動で入力する。
- 請求書(PDF)から情報を読み取り、会計システムに転記する。
- 情報収集・レポート作成
- 競合他社のWebサイトから価格情報を定期的に収集し、Excelにまとめる。
- 交通費検索サイトで経路と運賃を調べ、経費精算システムに入力する。
- メール対応
- 特定の件名のメールを受信したら、添付ファイルを指定フォルダに保存する。
- 定型的な問い合わせに対し、テンプレートを用いて自動で返信する。
- システム操作
- 基幹システムから日次データを抽出し、関係部署にメールで送付する。
一方で、RPAは「自ら判断する」ことはできません。そのため、デザインの考案や新しい企画の立案といった創造的な業務や、毎回手順が変わるような非定型業務は苦手です。
RPAとAI・マクロの違い
RPAは、AIやExcelマクロとしばしば混同されますが、役割や得意なことが明確に異なります。
| RPA | AI(人工知能) | Excelマクロ(VBA) | |
| 目的 | 業務プロセスの自動化 | データに基づく分析・予測・判断 | 特定アプリケーション内の作業自動化 |
| 判断能力 | ない(ルールベースで実行) | ある(自ら学習・推論) | ない(ルールベースで実行) |
| 対象範囲 | アプリケーションを横断して操作 | 制限なし | 主にMicrosoft Office製品内 |
| 得意なこと | 定型作業の正確・高速な実行 | 非定型作業、音声・画像認識 | ExcelやWord内の定型作業 |
- AIとの違い
RPAは「決められた手順」を忠実に実行する手足のような存在です。一方、AIはデータから学習し、自ら判断を下す「頭脳」の役割を担います。近年では、AI-OCR(AI技術を活用した光学文字認識)で読み取った情報をRPAがシステムに入力するなど、両者を組み合わせて高度な自動化を実現する例も増えています。 - Excelマクロとの違い
マクロはExcelやWordなど、特定のアプリケーション内でしか動作しません。対してRPAは、Webブラウザ、業務システム、Excelなど、PC上で操作する様々なアプリケーションを横断して作業を自動化できる点が大きな違いです。
RPAの3つのクラス
RPAはその提供形態によって、主に3つのクラスに分類されます。
- デスクトップ型(RDA)
個人のPCにインストールして利用するタイプ。自分のPCで行う業務の自動化に向いており、スモールスタートしやすいのが特徴です。 - サーバ型
自社のサーバにRPAをインストールし、複数のロボットを集中管理するタイプ。組織全体で大規模な自動化を行うのに適しており、セキュリティや統制(ガバナンス)を効かせやすいメリットがあります。 - クラウド型
インターネット経由でRPAの機能を利用するタイプ。PCへのインストールが不要で、初期費用を抑えて手軽に始められるのが魅力です。
RPAを導入するメリット
- 生産性の向上とコスト削減
24時間365日稼働できるロボットが作業を代行することで、人件費や残業代を削減し、圧倒的な生産性を実現します。 - 人為的ミスの削減と品質向上
人間が行うと必ず発生する入力ミスや確認漏れを防ぎ、業務品質を高いレベルで標準化できます。 - コア業務への集中
従業員が単純作業から解放され、より付加価値の高い企画立案や顧客対応などのコア業務に集中できるようになります。 - 働き方改革の推進
長時間労働の原因となる定型業務を削減し、従業員の負担を軽減することで、ワークライフバランスの改善に貢献します。
RPA導入のデメリットと注意点
- 業務停止のリスク
自動化の対象となるシステムの仕様変更やWebサイトのデザイン変更が起きると、ロボットが正しく動作しなくなり、業務が停止するリスクがあります。定期的なメンテナンスが不可欠です。 - 情報漏洩のリスク
ロボットに重要な情報(ID/パスワードなど)を扱う権限を与えるため、不正アクセスや管理不備による情報漏洩のリスク対策が必要です。 - 「野良ロボット」問題
各部署が管理部門の許可なく個別にロボットを開発・運用すると、全体像が把握できなくなり、セキュリティ上の脅威や業務品質の低下を招く「野良ロボット」が発生する可能性があります。導入・運用ルールの策定が重要です。
RPA導入を成功させるためのステップ
RPA導入は、やみくもに進めると失敗に終わる可能性があります。以下のステップで計画的に進めることが成功の鍵です。
Step1:目的の明確化と業務の洗い出し
「コストを削減したい」「残業時間を減らしたい」など、RPA導入の目的を明確にします。その上で、社内のどのような業務が自動化できるかを洗い出します。
Step2:自動化対象業務の選定
洗い出した業務の中から、費用対効果が高く、ルールが明確で自動化しやすい業務を選定します。
Step3:スモールスタートと効果測定(PoC)
まずは一部の部署や特定の業務に限定してRPAを試験導入(PoC:概念実証)し、効果を測定します。ここで得た知見を本格導入に活かします。
Step4:本格導入と運用ルールの策定
試験導入で効果が確認できたら、対象範囲を広げて本格導入します。同時に、前述の「野良ロボット」を防ぐため、全社的な運用ルールを定めます。
まとめ
RPAは、PCで行う定型業務を自動化し、生産性向上や人手不足といった課題を解決する強力なソリューションです。AIやマクロとの違いを正しく理解し、メリット・デメリットを踏まえた上で計画的に導入を進めることで、その効果を最大限に引き出すことができます。
まずは自社の業務の中に「ルールが決まっている単純作業」がないかを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。